ラボ紹介

WHAT IS SPORTS PHYSIOLOSY LABORATORY?

本Labでは、私たちが高いパフォーマンス・機能を発揮するための生理機構に着目して研究を行っています。高いパフォーマンス・機能には、筋や呼吸循環、心血管に加え、脳機能が、トレーニングやストレス、環境といった刺激に対し、どう適応しているのかを知ることが重要です。脳神経活動を評価する装置(脳波計、磁気刺激装置、機能的近赤外分光分析装置)、脳機能を評価する方法論(学習、感覚、認知)を様々な環境 (暑熱、寒冷、低酸素、メタバース) と組み合わせ、研究室ベースから実践的な応用研究まで行い、その成果を社会に還元します。
 

INTRODUCTION

POINT

卓越した技能を身に付けるための神経生理学的研究

高いパフォーマンスには、心・技・体をバランスよく高めることが不可欠です。中でも、「技」は千万無量のトレーニングによって身に付けることができます。これは、究極のパフォーマンスを志向するスポーツ選手、新しいスキルを身に付けようとする職業人、疾患や事故によって障害された機能を再獲得するためにリハビリテーションに取り組む人等、あらゆる人に当てはまります。しかし、「技」を身に付けようとする場合、「誰もが同じように期待した成果を得られるわけではない」、「いつでも同じように出来るようになるわけではない」という個人間・個人内の差の問題に直面します。私たちの研究室では、①技能習熟の個人間・個人間変動の神経生理学的根拠や②技能習熟を促進する手立てについて、経頭蓋磁気刺激(TMS)、経頭蓋電流刺激(tES)、機能的核磁気共鳴イメージング(fMRI、MRS)、脳波(EEG)を用いて検証することで、誰も取り残さない技能トレーニング法の開発を目指しています。

POINT

人の行動抑制機能に関する研究

“When physiologists have solved the problem of inhibition, they will be in a position to consider that of volition (C Lloyd Morgan 1891)”といわれるほど、人の行動抑制に関する研究は、私たちが生きていく上で重要な学術的な課題といえます。「どうしてあの人はすぐに声を荒げるのだろう?」「どうしてあの人は我慢できないんだろう?」と感じることはないでしょうか?私たちの研究室では、①機能的核磁気共鳴イメージング(fMRI)や脳波(EEG)を用いて行動抑制に関わる神経活動を調べることで、行動抑制機能の高い人と低い人の違いを明らかにするとともに、③行動抑制機能を高めるためのトレーニングや介入方法を提案するための研究を進めています。

POINT

女性特有の生体リズムを用いたパフォーマンス向上

50~90%の女性が、月経前や月経中、心や身体に何らかの不調を感じていることが報告されています。中には、無月経や月経不順等が、日常生活に支障をきたしている人も少なくありません。私たちの研究室では、①日々のコンディションの変化を記録し、自身の生体リズムを把握した上で、②そのリズムによる心身機能の変動と関連する神経活動を調べることで、③女性特有の生体リズムを人のパフォーマンス向上に結び付けるための研究を進めています。現在は、「トッパン・フォームズ株式会社」との共同研究を開始し、私たちの研究室で得られた研究成果をより多くの女性に活用していただくための社会実装研究を進めています。

POINT

アスリートの慢性痛に関する研究

アスリートは日々トレーニングに励んでいます。トップアスリートになればなるほど、怪我をする機会もふえ怪我とも上手につきあっていく必要があります。しかし、アスリートの中には医師によって怪我が治癒したと診断された後も痛みが残存するケースがあります。これらのアスリートの慢性的になった痛みをEEGやfMRIの技術を利用して早期に検出し、アスリートの慢性痛を解決する方法について検討しています。

POINT

様々な環境でパフォーマンスを発揮するための生理応答に関する研究

日常生活やスポーツ活動は必ずしも快適な環境で行われるわけではなく、暑熱・寒冷・低酸素・水中など様々な季節や環境で行われます。このような特殊な環境において常に最大限のパフォーマンスを発揮するためには、ヒトの身体が環境の変化にどのように対応するのかを知ることがカギになります。私たちの研究室では、「暑熱・寒冷・低酸素水中での運動中にはどのような生理応答が起きるのか?」を解明するとともに、環境に対する生理応答を基にした日常生活の安全性や運動パフォーマンスの向上のための対策法を提案するための研究を進めています。

POINT

ヒトの温度感覚や体温調節メカニズムに関する研究

ヒトの体温は精密な体温調節機構によって一定に保たれています。過度に体温が上昇・低下し、正常範囲を超えてしまうと熱中症や低体温症に陥り、運動機能や認知機能が著しく低下します。私たちの研究室では、「どのように温度を感じ、体温を調節しているのか」ということに着目し、ヒトの体温調節メカニズムを明らかにするために研究を進めています。  また、メントールやカプサイシンといった意図的に温度感覚を変化させる手法を用いて、 ヒトの身体機能や認知機能を高める方策の開発も進めています。

POINT

疲労を予防し、高い集中力を発揮するための運動・スポーツ戦略に関する研究

運動は筋や呼吸循環のみならず、注意集中・選択判断・記憶といった認知機能にも影響を与えます。低・中強度での運動は認知機能を高めることから、脳機能に対する運動処方に注目が集まっています。音楽やメタバース (仮想現実; VR, 拡張現実; ARなど) を用いた”楽しい運動”は、認知機能向上効果をより高め、暑熱環境や低酸素環境といった極所での運動は認知機能向上効果の消失させる可能性があります。運動による認知機能の変化を、脳機能イメージング法である機能的近赤外分光分析法 (fNIRS) や機能的磁気共鳴画像法 (fMRI) を用いて検証することで、運動処方としての最適な運動条件やアスリートが体感している疲労感、集中力低下 (認知疲労) の対処法開発を目指しています。

POINT

パフォーマンスを最大化するためのコンディション評価法

試合で高いパフォーマンスを発揮するためには、激しいトレーニングはもちろんですが、身体を適応させるための休息・栄養が重要です (超回復の原理)。私たちは、さまざまなトレーニングプログラムの検証に加え、超回復の原理を起こすための生理、認知心理学視点でのコンディション指標、評価方法を検証することで、パフォーマンスを最大化するコンディショニング法開発を目指しています。大学生アスリートのみならず、オリンピックや世界選手権での優勝を目指す柔道日本代表選手や体操 (ラート) 日本代表選手、日本バスケットボールWリーグに所属する選手 (アルビレックス新潟BBラビッツ) を対象とし、毛髪など新たなコンディショニング評価指標の確立を目指しています。